もやしの神様
物価高騰が止まらない昨今。
キャベツ、イカ、鮭、筋子、米——あらゆるものが値上がりしている。
そんな中、変わらぬ存在がある。「もやし」だ。
高校時代、野球部の遠征先では決まって「もやし鍋」が夕食だった。豚肉、にら、もやしを味噌仕立てで煮込んだ、チャンコ鍋風の一品。大量に食べても家計に優しく、腹持ちもいい。以来、私はもやしを愛用している。ラーメンに、炒め物に、鍋に。そして最近のお気に入りは、オリーブオイルでにんにくと鷹の爪を炒めた後、もやしを絡める「ペペロンチーノ風」だ。
それにしても、もやしの価格はなぜ上がらないのか。
手間もコストもかかるはずなのに、安価なまま市場に出続ける。農家の努力の賜物であり、私は感謝しながら食す。そして思う——もやしには「神様」が宿っているのではないかと。
「もやしっ子」といえば貧弱なイメージがつきまとうが、実はもやしほど粋な食材はない。普段は皿の端で控えめながら、時には主役を支え、時には主役にすらなれる。その柔軟さと実直さは、まるで職人のようだ。
芽を出し、すぐに育ち、すぐに食べられる。過剰な主張をせず、どんな料理にも寄り添う。
だが、一度火を入れると一気にしんなりと縮む儚さもある。
地味でも、無くてはならない存在。
そんな生き方も悪くない——もやしは今日も私にそう教えてくれる。
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